不妊症

INFERTILITY

不妊治療の最終目的は妊娠することではなく、元気な赤ちゃんを出産することです。当院では不妊治療から出産まで一貫した医療体制で治療に取り組んでいます。

  • 法的に婚姻関係にないカップル (結婚予定、事実婚など) でも検査や治療を進めることはできますが、以前のパートナーとの間の離婚が法的に成立していない場合は治療できません。
  • 高度肥満 (BMIが35以上) の女性には妊娠をお勧めできません。まず減量を試みてください。
  • 女性の妊孕性は加齢に伴って低下します。40代後半の女性では、生殖補助医療を行っても妊娠・出産できる可能性はほとんどありません。当院では47歳以上の女性には不妊治療を勧めておりません。
  • 他院で検査や治療を受けていた方は、紹介状 (診療情報提供書) を持参して受診ください。診療情報提供書がない場合は、前医で行なった検査をやり直さなくてはなりません。また、他科疾患の治療を受けている場合は、現在の状態や妊娠の可否について診療情報提供書をお持ちくださると速やかに治療を開始できます。
  • 基礎体温は排卵や妊娠の有無をチェックするのに有用です。毎日でなくても良いので記録し、受診日には低温相か高温相かを確認しておいてください。
  • 無精子症で当院を紹介された方は、翌日が休日ではない月〜木曜日の午前中に受診してください。まず男性の検査を行い、治療方針が決定したら女性の診察を始めます。

1次検査

HSG
  • 経腟超音波検査:子宮や卵巣に異常がないか確認します。
  • ホルモン検査:排卵に関わるホルモンを採血して検査します。月経周期の3〜10日目に行います。
  • 子宮卵管造影検査:子宮の形と卵管の通過性をレントゲン検査で調べます。月経終了頃から月経周期の10日目頃までに行います。
  • フーナーテスト (性交後試験):性交後の頸管粘液中にある精子の運動性を、排卵前のタイミング指導とともに調べます。排卵の数日前から排卵日までの期間に行います。
  • 精液検査:精子の数や運動性、精子のDNA損傷を反映する酸化ストレス値を調べます。自宅または院内の採精室にて、指定した容器に精液を採取していただきます。

2次検査

  • 子宮ファイバースコピー:子宮内腔を調べる内視鏡検査です。月経終了頃から月経周期の10日目頃までに行います。
  • 子宮内膜組織検査:子宮内膜を吸引採取して慢性子宮内膜炎の有無を調べます。
  • 腹腔鏡検査:子宮、卵巣、卵管などの状態を調べる内視鏡手術です。初期の子宮内膜症や卵管の癒着などが見つかることがあります。手術は脊椎麻酔または全身麻酔で行いますので入院が必要です。
  • AMH検査:原始卵胞で産生されるAMH (anti-Mullerian hormone) を採血して検査します (保険適用外)。卵巣年齢 (予備能) の目安になります。
  • 抗精子抗体検査:フーナーテストで異常があった場合に採血して検査します (保険適用外)。

一般不妊治療

handinhand
  • タイミング法:超音波検査で卵胞発育を確認し、尿のホルモンチェックや基礎体温をみながら、排卵日のタイミング指導を行います。
  • 排卵誘発治療:月経周期が不順の場合や原因不明不妊の場合に行います。さまざまな排卵誘発薬があり、ホルモン値などをみて薬を選びます。
  • 卵管通水治療:卵管の通過性が悪い場合や原因不明不妊の場合に行います。超音波検査を行いながら卵管に生理食塩水を注入します。
  • 人工授精:精液を洗浄して運動良好精子を濃縮し、子宮に注入する方法です。排卵日にタイミングを合わせて行います。当日に精子を準備できない場合には、凍結精子を用いた人工授精も行っています。
2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
治療周期数 339 375 360 447 541 442 496
臨床妊娠数 16 19 24 31 35 40 35
臨床妊娠率 4.7% 5.1% 6.7% 6.9% 6.5% 9.1% 7.1%
  • 男性不妊治療:ビタミン剤や漢方薬などで精液所見の改善を期待します。効果は不確実なので、状態によっては早めに生殖補助医療にステップアップします。
  • 重症男性不妊の治療:無精子症や重症乏精子症では、ホルモン分泌異常や染色体・遺伝子異常が見つかることがあります。ホルモン検査と遺伝学的検査 (染色体検査、遺伝子検査) を行い、治療方針を決定します。遺伝学的検査は月〜金曜日 (翌日が祝日の場合を除く) の午前中にしか受けられません。

無精子症の難病医療費助成制度

  • 難病医療費助成制度は、特定の難病に対して保険診療の自己負担分の一部を国と都道府県が負担する制度です。
  • 無精子症の原因のひとつである「低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症」 (下垂体前葉機能低下症) が助成の適応です。低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症についてはMHH Japanのホームページをご覧ください。
  • 助成を受けるには「医療受給者証」の申請(青森県のホームページを参照)が必要です。以下の書類を居住地の保健所に提出します。
  • 特定医療費支給認定申請書
  • 同意書
  • 世帯員の保険証の写し
  • 世帯の所得を確認できる書類
  • 世帯全員の住民票
  • 臨床調査個人票 (医師が作成します)

生殖補助医療 (ART)

self injection
  • 生殖補助医療は、卵子と精子を身体の外で受精させ、受精卵 (胚) を子宮へ戻す不妊治療です。生殖補助医療の費用はすべて保険適用外です。
  • 通常は複数の卵胞発育を促し、かつ排卵を抑制するために、調節卵巣刺激を行います。さまざまな方法があります。
self_injection
  • 調節卵巣刺激の注射薬は、自己注射を推奨しています。毎週火曜日に自己注射の集団講習会を開催しておりますので、治療を始める前に受講してください (要予約)。受講せず個別指導を受ける場合は、自己注射導入初期加算料 (5,000円) をいただきます。
  • 体外受精 (IVF):卵子と精子を一緒に培養して、自然に受精するのを待つ方法です。
  • 顕微授精 (ICSI):顕微鏡下で1個の精子を卵子に注入する方法です。精子が少ない場合、運動率が悪い場合、IVFでは受精しなかった場合などに行います。
  • 胚移植 (ET):受精卵を子宮の中へ戻します。受精後2〜3日目 (初期胚),4日目 (桑実胚) または5日目 (胚盤胞) に移植します。
  • 受精卵の凍結保存:受精後5~6日目の胚盤胞を凍結保存します。
  • 凍結融解胚移植 (FET):凍結保存していた胚盤胞を融解して移植します。
  • 透明帯開口術 (AHA):凍結保存によって硬くなった透明帯にレーザーで穴を開けます。胚の孵化を助け着床しやすくします。
  • 子宮内膜着床能検査 (ERA):凍結融解胚移植における子宮内膜の着床能を評価する検査です。黄体ホルモン投与後に内膜組織を採取し、着床に関与する236個の遺伝子の発現レベルを分析します。
embryos
体外受精顕微授精凍結融解胚移植
患者数 109 153 194
平均年齢 (歳) 38.6 38.9 37.0
採卵周期数 147 273
胚移植周期数 70 115 313
臨床妊娠数 22 27 124
 移植あたり臨床妊娠率 31.4% 23.5% 40.0%
 患者あたり臨床妊娠率 20.4% 17.6% 63.9%
流産数 4 9 36
 臨床妊娠あたり流産率 26.5% 33.3% 29.0%
生化学的妊娠数 16 11 60

凍結胚・卵子・精子・精巣組織の保存期間延長・廃棄

  • 胚・卵子・精子・精巣組織の凍結保存を継続する場合は、1年ごとに更新手続きが必要です。下記の書類をダウンロードして内容を確認のうえ、手続きください。
予約システムにメールアドレスの登録をお願いします
次回の保存期限が近づいたら、予約システムを利用して確認のメールを送信します。メール以外の方法では連絡しませんので、予約システムにメールアドレスを登録し、受信できる状態に設定してください。不明な点は当院へお問い合わせくださいますようお願いいたします。

特定不妊治療助成事業

  • 生殖補助医療を受けられている方で、夫婦の所得の合計が730万円未満であれば、助成を受けることができます。詳細は青森県青森市のホームページをご覧ください。
  • 六ヶ所村、平川市、十和田市では独自に助成事業を行っています。詳細は役場や市役所でお尋ねください。

不育症

RECURRENT PREGNANCY LOSS

流死産や新生児死亡を繰り返して、子どもをもてない状態を「不育症」といいます。そのうち、妊娠22週未満の流死産を繰り返す状態を「習慣 (反復) 流産」といいます。

妊娠初期の流産の約70%は受精卵の染色体異常が原因です。しかし、不育症ではカップルのどちらかに問題がある可能性があり、原因に応じて治療を行います。原因不明の場合は治療法が確立されていません。

厚生労働省不育症研究班に参加した経験を生かし、必要な検査を行ったうえで現時点で最良と考えられる治療を提示します。

女性の検査

heart
  • 内分泌・代謝検査:甲状腺機能異常、多嚢胞性卵巣症候群、糖尿病なども不育症の原因になることがあります。
  • 慢性子宮内膜炎検査 (ALICE):慢性子宮内膜炎 (CE) は子宮内膜に形質細胞という成熟Bリンパ球が浸潤した状態で、不妊や不育症を引き起こす可能性が報告されています。原因は不明ですが、 感染や子宮内膜症による炎症の関与が推定されています。内膜組織を吸引採取して、形質細胞の浸潤と病原体感染の有無を調べます。感染性のCEと診断された場合は抗菌薬を投与します。
  • 子宮内マイクロバイオーム検査 (EMMA):EMMAは子宮内の細菌叢が着床に適した状態か判定する検査です。内膜組織を吸引採取し、次世代シーケンシング技術を用いて乳酸桿菌や病原体の比率を調べます。異常があればプロバイオティクスや抗菌薬を投与します。
  • 免疫機能検査:妊娠の維持には母体と胎児との免疫応答が必要と考えられています。採血でナチュラルキラー (NK) 細胞の傷害性、ヘルパーT細胞バランス、抗HLA抗体を調べます (すべて保険適用外)。現時点では検査の意義が明らかではないので、検査を希望する方に行っています。

男性の検査

  • 精子の酸化ストレス:酸化ストレスは精子のDNA損傷を引き起こし、不妊や流産の原因となる可能性が報告されています。精液検査で精液の酸化レベルを測定します。

夫婦で受ける検査

translocation
  • 末梢血の染色体検査:ヒトの染色体は46本あります。染色体がそろっていても、一部の場所が入れ替わってしまっていることがあります。これを「転座」といいます。両親のいずれかに転座があると受精卵に染色体の欠損や重複が生じて流産してしまいます。染色体は夫婦それぞれから採血して調べます。染色体異常は治療できませんが、異常があっても出産できる可能性があります。遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします

流産した胎児・絨毛の検査

  • 病理組織検査:流産した組織の感染、炎症、血栓などの有無を調べます。
  • 絨毛染色体検査:流産組織の染色体を検査します (保険適用外)。絨毛細胞を培養して調べるため、結果が出るまでに約3週間かかり、流産の状態によっては検査が行えないこともあります。原因を特定することにより、治療方針の決定に役立てることができます。